ひより軒・恋愛茶漬け -45ページ目

「アイシカタ」


こびない
いつも凛と胸をはって

どれだけ愛情を注がれても
当たり前みたいに
あびて

あなたに愛されていることに
有頂天になっていた

傷でもいいから
わたしを
きざみたかった

優しさではないもので
あなたを
縛りたかった

だれより も

「パン食い競争」

運動会で
保護者参加のパン食い競争がありました。

ひもにぶら下がったアンパンを
手を使わずに食べてゴールへ。

10人ずつ列になって競争するのですが
私の列では私が1着、主人が2着でした。
ふふ…勝った!

それにしてもパン食い競争って
口でパンをひもから引きちぎる時よりも
取ったパンをくわえたまま
走るのが恥ずかしいんですね。

ほんと…犬になった気分でした。
人間性を奪われたっていうか…。

時々主人に「ドーベルマン」って
言われるのですが
やっぱり人間でよかったな♪


「運動会④」

  運動会③の続きです。
  子どもの運動会で
  小学生の頃を思い出して書きました。
  「運動会」の最終回です。


  「運動会④」

さりげなくスズキ君と話を終えて
下駄箱のところへ行くと
ショウコちゃんは恥ずかしそうに手を振った。

「ヒロシ君。
…昨日はありがとう。
家に帰ったらお母さんがいて
もうお父さんとも仲直りしてた。
ごめんね。
私…ヒロシ君になぐさめてもらったのに
何も言わなくて。」
「いいよ、そんなこと。」
「ううん。ホントにごめん。
それから…これ、ヒロシ君でしょう?」

ショウコちゃんは
体操服の短パンのポケットから
握りこぶしを取り出した。

ゆっくりと開いた手のひらに乗っているのは
真っ赤な包み紙に包まれた大きなイチゴ飴だった。

「小さい時、泣いていると
いつもお母さんが買ってくれた飴だよ。
私が<元気のイチゴ飴>って呼んでた。

これが昨日ウチの郵便受けに入ってたんだ。
一瞬お母さんかと思ったけど
聞いたら違うって言うし
他にこの飴のことを知っているの
昔、遊んだヒロシ君しかいないって気づいたんだ…。」

僕は答える代わりに
短パンのポケットに手をいれて
同じ飴を取り出した。

2つの手のひらで光っているのは
赤くて丸くてつやつやの2つのイチゴ飴。

「やっぱり、ヒロシ君だったんだね。
だけど、どうして、そんなに……。」

ショウコちゃんの言葉をさえぎるように
校内放送が流れた。
~「全校生徒のみなさん。午後の競技がはじまります。
自分の応援席に戻ってください。」

僕たちは急いで飴をポケットにしまい、
お互いのあわてぶりがおかしくて吹き出した。
「ありがとう。ヒロシ君。」といって
ショウコちゃんは又手を振ると
自分の席にもどっていった。

まだ今よりもっとちいさな子どもだったショウコちゃんが
イチゴ飴に感じていた不思議なチカラ。

<元気のイチゴ飴>は僕にも
誰かを笑顔に変えるチカラをくれた。

自分の席へと急ぐ生徒たちが起こす
校庭の砂煙に目を細めながら
僕も自分の応援席へとはずむように駆け出した。

            -オワリー

「運動会③」

  運動会②の続きです。
  ブログを書き出してから
  書き始めると止まらなくなって
  いつも話が長くてすみません。

  それでも読んでくださる
  たくさんの方に感謝しています。


 「運動会③」

4年生の応援席から
ショウコちゃんが小さく見えた。
公園で別れたあとどうなったのか
電話してみる勇気はなかった。

ショウコちゃんのお母さんが
保護者席にいないか探してみたけど、
人が多すぎてよくわからない。

「ヨーイ。」
バン!
組別リレーが始まった。

2番手のショウコちゃんは
バトンを受け取ると
風を切って僕の前を通り過ぎる。
グングン前の選手を追い抜いて
トップで次の選手にバトンタッチ!

走り終えたショウコちゃんの表情が見たくて
首を伸ばして目を凝らして見ると…

笑顔だった!
その笑顔でホッとした。
そして次の瞬間、
ショウコちゃんが
大きく保護者席に手を振った。
その方向を見ると
ショウコちゃんのお母さん!

良かった。
良かったね。

~「ただいまの結果、組別リレーは赤組の勝ち!」

「バンザーイ!バンザーイ!」
僕は白組だったけど
心の中で大きくバンザーイと叫んでいた。

  *****

思い思いに校庭にシートを敷いて
みんなお昼のお弁当は家族と食べる。
ウチはいつもの唐揚、ポテト、卵焼き
筑前煮とリンゴ、鮭のおにぎり、
僕の好きなものばかりだ。

ショウコちゃんの家族も
遠くのシートでお弁当を食べている。
お父さんもお母さんも弟も笑っている。
身振り手振りで話しているショウコちゃんの背中が
校庭に楽しそうな影を作っていた。

安心した僕は
いつもより2個もたくさんおにぎりを食べて
父と母をおどろかせた。

僕が「ごちそうさま」をした後、
鉄棒にもたれてスズキ君と話していると
下駄箱のところから
ショウコちゃんが僕に手招きしているのが見えた。

              -つづくー

「運動会②」

 運動会①の続きです。
 写真にちょっとだけ
文を書こうと思ったのに
勝手に長くなってしまったお話です。 


  「運動会②」

ところが小学校に入学すると
ショウコちゃんは1組、僕は3組。
廊下で顔を合わせることも
ほとんどなくなってしまった。

話すこともないまま、何年もすぎて、
合同授業で目が合っても、
あいさつさえしなくなっていた。

ところが、ちょうど運動会の前日のこと。
僕が家の近くの公園に差しかかると
ブランコをこいでいる
ショウコちゃんが見えた。

ショウコちゃんは口をきつく結んで
思いっきり大きくブランコを揺らしていた。
ぶら~ん。
ぶら~ん。
前に後ろに。
眉間に皺をよせたまま。
ずっと目の前の一点を見つめたまま。

黙って通り過ぎることができなくなって
僕はブランコに近づいていった。
「こんにちは。」
小さい声で僕が声をかけると
ひどく驚いた顔で
ショウコちゃんは振り向いた。

「あ。…ヒロシ君。」
「なんか話すの…久しぶりだ…よね。」
「そうだね。」
「ショウコちゃん、どうしたの?
公園でブランコなんてめずらしい…。」

僕がそういった途端、
ショウコちゃんの目から涙が
細く細く
頬を伝って落ちた。

「ど、どうしたの?どこか痛い?」
どうしよう…。
僕のせいじゃないと思うけど…。

ショウコちゃんはブランコを止めて
両手で顔を覆ってしまった。
「ごめんね。…ヒロシ君。……。
実はウチ親が昨日ケンカして
お母さんが家を出て行っちゃったの。
明日の運動会で
私がリレーの選手に選ばれたの、
お母さん、すごく喜んでくれたのに…。」

「……でも帰ってくるんでしょう?」と僕。
「わからない。なんだか帰るのが怖いんだ。
だから、ここで…時間……つ、ぶ、し、て…」
最後は又泣き声で
よく聞こえなくなった。

…………。

彼女を勇気づけてあげたい!
元気出して!
元気出してよ、ショウコちゃん!

…………。

「ね、ちょっと、こっち見て!」
僕は明るく声をかけたけど
ショウコちゃんは
恥ずかしいのか、
なかなか顔を上げようとしない。

「ね、ほらここ。
ほら、僕のあしもと!」
ショウコちゃんは
ゲンコツで瞼をゴシゴシしてから
僕の足元を見た。

砂の上に、ファイト!という吹き出しと
小枝で描かれた
陽気なステゴザウルスが
おおきく立ち上がって旗を振りながら踊っていた。
    
             -つづくー

「運動会①」

 子どもたちの運動会が
   終わりました。
 ワクワクドキドキだった
   子どもの頃の
 運動会を思い出しながら
   書いたお話です。


 「運動会①」

~「ただいまの種目は4年生による玉入れでした。」
校内アナウンスはカタギリ先生の声だ。

これで午前中の僕たち4年生の出番はおしまい。
後はゆっくりと家族でお弁当を食べるだけ。
それなのに僕の心臓は
ドキドキと高鳴っている。

ショウコちゃんがこれから
組別リレーに出るからなんだ。

組別リレーは
各学年4人ずつ選手を出して
赤組と白組が戦うというもの。
お弁当前の最高に盛り上がる競争だ。

~「組別リレーの選手は入場門へ集まってください」
いつもより少し気取ったカタギリ先生の声を聞いても
僕の心臓はずっと鳴り止まなかった。

*****

僕とショウコちゃんは
幼稚園からの仲良しだった。
本を読んだり絵を描くのが好きな
ひとりっこで、おとなしめの僕と
2つ違いの弟がいて、しっかり者のショウコちゃん。

ある日、幼稚園で
僕の描いていた絵を見たショウコちゃんは
「それ、ステゴザウルス?
すごぉい。それ私にくれない?」と大きな声で僕に話しかけてきた。
ビックリして思わずうなずき返す僕に
ショウコちゃんは
「弟のベッドの壁に貼ってあげるの。
暗いとこ、こわがるから。」
と嬉しそうに僕の絵を胸に抱えた。

そのときから僕たちは友達になったんだ。

          -つづくー

「ラッキー・クローバー」


「ラッキー・クローバー」

みんなが幸せになりますように!

誰かを
愛したり愛されたりしながら
いつか叶うはずの夢を
ずっと持ち続けていられますように!

「バリ!バリ!バリ!②」

   昨日にひき続き
    バリ旅行での
  彼(現在の主人)と
   私のお話です。
     今回も
  ダイビング初心者の彼に
  襲いかかる危機とは?



「バリ!バリ!バリ!②」

ドロップオフから
何とか生還した彼でしたが
あまりの水中の素晴らしさに
「やめたい」と言うこともなくダイブをこなしていきました。

ライセンス取り立てのため毎回エア切れ、
バランスがとれずに水中で腕を振り回していた彼。
でも、無理やり中上級のポイントに挑戦したのが良かったのか
私の前でこれ以上笑われてたまるかという
男の意地のおかげなのか
瞬く間に上達していきました。

そんな彼に2度目の恐怖が襲ったのは
4日目のこと。
それは鮫との遭遇…です。

海外のダイビングでは普通のことですが
バリにも鮫に遭うポイントはたくさんあります。
ダイビングをしていない友人は
「え~!鮫と遭ったの!?大変だったね~。」
とビックリしますが、
ダイビングをやっていると
海のあらゆる生物に遭遇したいものなのです。

鮫だって例外ではなく、
おとなしい種類の鮫で
餌付けショーをやっているところもあるくらい。
モルディブに行った時は
片手をショーのとき鮫に食べられたという
現地ダイバーがいました。

そのときも実はバリ人のガイドが
わざわざ鮫のいるポイントに
連れて行ってくれたのです。
鮫を指差すガイドと喜んでカメラ片手に近づく私。

その時そんなこととは知らない彼は
果たして!!!

鮫に近づきながら彼のほうを見ると、
果たして!!!

彼はいきなり右足につけていた
ダイバーズナイフに手をかけました!
嘘?!
こいつ!戦う気だ!
鮫と?!
えっ!鮫と戦う?!

笑いすぎて
レギュ(空気を吸うとこ)が
はずれそうになりました。
いくらなんでも勝てるわけがないでしょ~!

わかったから。
勇敢なことはわかったから、やめてぇ…。

笑っちゃうから、やめてえぇぇぇ…。

当然、彼をはがいじめにして
止めたことはいうまでもありません。

あれから私と結婚した彼ですが
今でも海の番組を見ると
「あの時に鮫と戦っていたら、今ここに俺はいないよ。」
っていいながら、お茶をすすっています。

当たり前でしょ。もう。

「バリ!バリ!バリ!①」

   バリブログの
   読者になったので
   記念にバリ旅行の
   思い出をお話します。


「バリ!バリ!バリ!」

私が主人と初めて出会ったのは
うまくいかない恋を抱えて
20代の終わりにさしかかった頃のこと、
ネオンまぶしい新宿の
ポリネシアンパブ「ティキティキ」でした。

翌日、ダイビングに行く予定だった私と
サーフィンに行く予定だった彼(主人)。
海つながりで意気投合したというか、
意気投合させられたというか。

それから付き合い出した私たちは、
ある日雑誌を見ていて気がつきました。
2人の趣味が両方満たされる
パ・ラ・ダ・イ・スがあるじゃない!
それが「バリ島」だったのです。

バリ旅行が決まると
彼は急いでダイビング・ライセンスを取りました。
つまり超初心者です。
「大丈夫かな~。メンドーみられるかな~。」と思いながら
まあ、何とかなるだろうと
るんるんバリ旅行へと出かけたのでした。

バリのダイビングスポットは
とても変化に富んでいます。
古いログブックを見てみると
1日目ヌサドゥア。
2日目ヌサペニダ。
3日目トランバン沈船。
4日目ヌサペニダ・グンカン。
5日目ムンジャガン。

2月の空いている時だったので
ステキなバリ人ガイド1人に
私たち2人の3人組という贅沢な状態で
毎日2ダイブずつポイントを回りました。

海外のダイビングを幾つか経験した後でしたが
特にサンゴの美しさに感動したのを覚えています。
今思うと、水中カメラの調子が悪かったために
記録があまりないのが本当に残念です。

1日目は難しいポイントではなかったのですが
2日目、いきなり彼に試練が与えられました。
ドロップオフの壁です。
左は美しいサンゴの壁に魚の群れ。
ただし壁から少し離れて右の下を覗くと
底が暗くて全く見えないのです。
暗黒のかいてい~という感じ。

ガイドによると海峡部分で
100mちかい水深があるそうです。
しかもそこは流れがとても速いのです。
油断をすると
流れによって壁から体がはがされて
どこまで流されてしまうかわかりません。

自分の呼吸する音だけが聞こえる
音のない海の中。
急に心配になっても声はかけられません。
いそいで彼の姿を目で探すと……。

ああ!何てことでしょう!
心配どおり彼は壁から離れて
ドンドン沖へと流されていくではありませんか!

助けを求めるように顔をこちらに向けて
片手をのばしながら
暗い海へと…遠ざかっていくうぅぅぅ…。
さようならあぁぁぁ…と
のんきにいっている場合ではありません。

幸いなことに
すぐにガイドが気づき追いかけていきました。
サンゴにしがみつきながら待つこと1分。
視界の届かなかった遠くの方から
ガイドに手を引かれて
小さくなっていった主人の姿が
次第にはっきりと見えてきました。
あ~笑った、笑った。
じゃなくて
あ~良かった、良かった。

彼はもうこれで死ぬと思ったそうです。
真っ暗な海底を覗き込みながら
走馬灯のように人生が思い浮かんだと
後で語ってくれました。


「ドラジェ・江國香織」

  幸せというオリに囚われた
     主婦にとって
  読書は違う自分を生きる
     どこでもドア
  恋愛を中心に書いていきたいと思います。


「ドラジェ・江國香織」

恋愛の小説について思い出そうとしたら
まず短編集「ナナイロノコイ」が浮かびました。

「恋愛小説」という副題のついた
この本には7人の女性作家が書いた
7つの恋の物語があります。

江國香織・角田光代・井上荒野・谷村志保
藤野千代・ミーヨン・唯川 恵

つまり1冊で7つのテーストが味わえるのです。

そのなかで最初に載っているのが
江國香織さんのこの小説です。

主人公は、妻のいる恋人の哲夫から
友人の奈津夫を紹介されます。
奈津夫は恋愛不毛説の持ち主で
いきなり彼女の部屋に来て
哲夫と別れろと言うのです。
「彼はあなたをすきなんじゃなくて
あなたのような人がすきなわけだから」と。

このときから
奈津夫と彼女の腐れ縁が始まりました。
お互いに恋人には1度もならないまま
別々に恋を重ねていきます。
月日は流れ
20代後半だった彼女は
40代を過ぎていました。
そして今日は奈津夫の結婚式…。

私は主人公と違い結婚もし
子供もいます。
でも彼女の気持が心にしみてくるのです。

若いときの傲慢な自分。
自意識の強さ。
今は冷静にそれを見ることができます。

もう1度若い頃に戻りたいですか?
と聞かれたら、答えはノー!
でもそれは否定ではありません。

恥ずかしいほど若かった
あの頃の自分があるから
今の自分がここにあるのだから。