バスの揺れ方 | ひより軒・恋愛茶漬け

バスの揺れ方

だってそんなに急に

勉強が好きになるわけがない。

図書館通いの理由は

18時45分のバスに乗るためだ。


程よくお客を乗せたいつものバスが

冬の暗いバス停に滑り込んでくる。


ばたばた鳴る扉。

暖められた空気。


定期をみせて

どきどきしながら車内を見ると

あ、やっぱりいつもの後ろから2番目の席に

あの人がいる。


あの人は本から顔をあげない。

こんなコドモなんてきっと眼中にない。

もう1ヶ月も隣に座るわたしを

ちらっと横目で見ることすらしない。


ダカラ カレガ スキダ。


月が出ている。

わたしたちを照らす。


月を見るふりをして

彼の横顔を盗み見る。

遠い世界にいる人の深い呼吸で

彼はページをゆっくりとめくっている。


大人の人の匂い。

スーツの袖口からのぞく手首。


密着した

体の片側が暖かくて

ついまぶたが重くなっていく。


3個目のバス停前のカーブ。

5個目のバス停からの坂道。


バスの揺れ方と違う揺れが

いつも降りる8個目のバス停で

わたしを起こす。


大きな手のひらは

肩に置かれ

覗き込むようなまなざしに驚いて


席を立ちころがるように降りるわたしは

みっともないくらい滑稽なのだろう。


ワラワレテ モ イイノ。


バスの車窓に

はじめてみる彼の笑顔が

まだ夢の中みたいな

スピードで遠ざかっていく。





いつもブログの記事を書くときは

同じような作品がないか

少し調べます。


詩って言葉が少ないから

誰かの何かとかぶってしまっても

不思議ではないので。


今回バスの場面を書こうと思ったら

スピッツの歌がHITしました。


全然内容は違うけれど

出だしの「バスの揺れ方」を

タイトルにしてみました。