道徳 | ひより軒・恋愛茶漬け

道徳

いつのまにか

覚えこまされる。

きれいだね、と

誰かが指し示す。


この人の使う

柔らかな声も

笑顔も

受け入れられないのは


それが

少しも

わたしの心を動かさないからだ。


わたしの集める

美しいものを

この人はみんな捨てた。


醜いとか

臭うとかいう

そんな理由で


眉をひそめ震える手で

破壊までしたのだ。


叫び

乱れ

つばを飛ばす人に


ゆがんでいるのは

あなた、ではないかと

判決のように

言い渡すとき


わたしの中の

全てが腑に落ちて

わたしは

初めて抱きしめる。


この人の

柔らかすぎる体と

かたくなすぎる

心を。


背丈の割には

長すぎる腕で。





聞こえていますか。

来てください。