不動 | ひより軒・恋愛茶漬け

不動

あなたが ここに

目の前にいるなら

わたしは

いつまででも見ていられる。


シャツをたたむ姿も

髪をととのえる姿も


それが

わたしのもとから

出て行くあなたの

姿だったとしても


だまって

何時間でも

みつめられる。


はやい鼓動みたいな

靴の音。


蹴られたら

痛そうなつま先の形。


わたしなんか

見えないみたいに

わたしなんか

いないみたいに


裸足に靴を履いて

部屋の中を

行き来するあなたを


ベッドの端に

ひざをそろえて

シーツを巻いた

裸のままで


静かに微笑んで

待っているみたいに。


所有を

望むなんて罪の

ためいきと

舌打ちの罰を。


ただ眺めたいだけ。


美しさを

目に焼き付けたい


だけ


なら


いい?





いくつになっても

慣れないものはあります。