ずっと苦しかったよ。 | ひより軒・恋愛茶漬け

ずっと苦しかったよ。

カフェの外のテラスは 

まだ

雨上がりの匂い。


大きな包みをほどいて

わたしの足元に

ひざまずく

あなたを制して


わたしは

自分で

パンプスを脱ぐ。


おしゃれな

アウトドア用の長靴は

わたしのお気に入りの

レインコートと同じ

やわらかな薄緑色だ。


ひざまでの

その靴に

そっと脚を入れると


甲がひんやりとして

気持ちいい。


ありがとう。


色違いの靴をはいた

あなたと店を出て

手をつないで歩く。


舗装した道路にできる

水溜りにわざと入ると

ばしゃん、と

大きな音がした。


はずかしい。


わたしたち

きっと見られてる。


それでも

子供みたいに

きゃあきゃあ言って

はしゃいだ。


人の少ない路地に入って

ライトセーバーみたいに

たたんだ傘を

振り回しあう。


水溜りの中の

さかさまの世界。


一緒に映っている

上機嫌なふたり。


ほんとうは

大人であることを

きちんと確認してから

キスをした。


水溜りの

さかさまの二人に

ちっぽけな

しずくが落ちて


なにかを守るような

いくつもの波紋が

ぐるぐると

重なっていく。






梅雨入り、ですね。

雨の日は嫌いじゃありません。


わざと傘をささずに濡れたり

わざと雨上がりの水溜りに入ったり

本当にします。


今、近所では

タチアオイが綺麗で

近くにたくさん咲いているところがあるので


雨の日は

そこで

色とりどりの大きな花にかこまれて

耳をすませたりします。