見せたいもの | ひより軒・恋愛茶漬け

見せたいもの

駅の改札は まだ

雨上がりの匂い。


出てくる人の

たくさんの人の中から

一人の顔で歩く

あなたをさがす。


突然 思い立った出迎えは

さっきベランダで見た

すばらしい

夕焼け雲のせいだ。


あなたの

車窓を流れていく

空を

思い待つ。


ほら

あなた だ。


怒った顔で

ひとより速いテンポで

階段を下り


わたしの胸の

鳴らない電話を

振るわせる。


ねえ

ここだ よ。


答えて

小さく手を振ると

驚いて それから

吹き出すように笑った。


そんなに

おかしいかな。

わたしの

ママチャリ姿。


どんなに恥ずかしがっても

今日は

スーツのあなたを

後ろに乗せて


家まで

土手の上の道で帰る。


大きなかばんは

かごの中。


だから

あなたは両手を

腰にまわして


わたしの髪に

顔を埋める。


鼻先がうなじに触れて

すごく

くすぐったいけど


西の海に続く

川の

橋の上につくまで


わたしの言うとおりに

目をつぶっていて。






自転車の二人乗りが好き。


いけない事?

違法かな?


でも 好きです。