踊る人 | ひより軒・恋愛茶漬け

踊る人

ようやく

性別の見分けられるほど遠く

その

男の人は立っていた。


自分にしか聞こえない音に

耳をすませ

少し歩いては立ち止まり

また歩いて。


長い手足の

ゆるく

体に沿って


重さを感じさせない

しなやかな動き。


鳥がはばたく前の

直立する

静かな佇まいで


そこに。


顔も見えない。

声も聞こえない。


ただ

踊る人なのだ、と

わたしにもわかった。


風が吹き

木々が揺れ

雲が走る。


ようやく

性別の伝わるほど遠く

ひとらしく

わたしは立ち


届かない笑顔と

拍手を送る。


美しさから

適切な距離を保ち

感じるための心を

空っぽにして。






最近、他のものを書いていて

なかなか更新できなくて

すみません。


舞踏をやっている人の

美しい佇まいは

ちょっと

人間離れしている気がします。