パパゲーナ | ひより軒・恋愛茶漬け

パパゲーナ

バレンタインの

サプライズなんて

待てない。


「僕に

チョコレートは」って

ストレートにねだる。


いつもちょっと

意地悪なあなたは

あきれたような顔で。


  くる? 


  え?


夜の街をぬけ

人ごみをぬけ

振り返らない

あなたを追った。


知らない裏道。

うすぐらい街灯。


たどりついたバーの

重い扉を開けると

あなたは親しげに

カウンターへと進んでいく。


  いい?


  うん。


マスターと笑って

カウンターの中で

袖をまくる

あなたをみた。


チョコリキュール

生クリーム

そして僕の知らないブランデー


あなたの細い腕が

シェイクをすると

グラスの中に

カフェオレ色の


  パパゲーナ。


  何?


甘くて強い

大人の味。


僕は

無邪気に笑うのをやめて

静かな

マスターを横目でうかがう。








バーテンダーの友人に教わった

パパゲーナを

今年のバレンタインは

贈りたいと思います。