「 T の告白 ③ 」 | ひより軒・恋愛茶漬け

「 T の告白 ③ 」

「 T の告白 ③ 」

それからしばらく
T は話しかけてきませんでした。
私も気まずくて
なんとなく目もあわせずに過ごしていました。

たまたま委員会もなく
早めに帰って
再放送のドラマをゆっくり見ようと思った日、
下駄箱で T と鉢合わせしてしまいました。

「お。一緒に帰る?」
「うん。いいよ。」
と軽く言ったものの、
あれからカノジョの話は1度もしていないのです。
聞いた方がいいのか、
聞かない方がいいのか。

「この前見た映画なんだけどさ…。」
T がカノジョのことに触れないので
私もだんだん楽しんで話せるようになりました。
良かったね、忘れられたんだね、とホッとしたのです。

そして家の近くで別れるとき
T は鞄から
「これ。この前のお礼。」
といって大きな封筒を取り出しました。
「何、お礼って…。」と言っている途中で
「じゃ、な。」と
T は彼の家のほうへ歩いていってしまいました。

「ただいま~。」と家のドアを開けると
「お姉ちゃん!ドラマ始まるよ!」と
居間の方から妹の声がしました。
私は自分の部屋に鞄を置いて
着替える前に一応見ておこうかな、と
T がくれた封筒を開きました。

それは厚紙にはさまれた私の写真でした。
あの日カノジョを待つ間に
犬とじゃれあっているのを
望遠でこっそり撮ったのでしょう。
大きく引き伸ばされた私の笑顔は
斜めに夕日を浴びて輝いていました。

写っているのは自分の笑顔だけなのに、
遠くでシャッターをきっている
T の笑顔が目の前にあるように感じられて
胸がキュっと音を立てて締めつけられました。

これを T はいつから鞄に入れていたのでしょう。
封筒にはいくつも皺が寄っています。
写真を裏返すと
几帳面な文字でこう書いてありました。

 「幸せそうで人を明るくする笑顔は
 ピンクの服でお遊戯をしていた頃と
 全然変わってないね。
 つまり成長してないってコト!

 僕の写真集の被写体にしてあげるよ。
 っていうか、なってください。
 
 この写真、僕の部屋にも飾ってあるんだ。
 よく撮れたから。
     ソレトヒシャタイガカワイイカラ。
   お世辞!」

居間のテレビから
聞き覚えのあるテーマソングが聞こえてきました。

恋のドラマが始まる時間です。
              -おしまいー


告白するのが好きな人と
告白するのが苦手な人がいますよね。

私は学生の時も大人になってからも苦手でした。
異性と友達にはすぐなれるけれど、
好きな人の前では…いくじがないんです。

「好きです」なんて言えないから
わざと怒らせて気を引こうとしたり…。
「小学生じゃないんだから、もう!」って
いつも思っていました。

いろいろな恋愛ブログを読んでみると
奔放で積極的な話が多いので
羨ましいな。