「 T の告白 ① 」 | ひより軒・恋愛茶漬け

「 T の告白 ① 」


「 T の告白 ① 」

「名案を思いついたんだけど。」
T が珍しくうつむいたまま話を切り出しました。
近所に住む幼なじみの T とは、
偶然にも高校で同じクラスになったのです。
時々、肩を並べて一緒に帰る私達。
最初こそ友達に好奇の目で見られましたが、
全く正反対の性格で
背が高く肩幅の広い体育会系の私と
中背で痩せ型、色の白い T とは
どこから見てもお似合いのカップルには見えなかったのでしょう。
すぐに「ただの幼なじみ」として公認されました。

「名案って。カノジョのこと?」
「うん。一緒にカノジョに会って欲しいんだ。」
実は T には他の高校に
前から思いを寄せている子がいました。
ある夏の夕方、
写真を撮るのが好きな T は、
自宅近くの隅田川沿いに行き、
夕日にカメラを向けていたそうです。
するとレンズの前を天使が(ここで私は笑いをこらえた)
通り過ぎ…完璧なヒトメボレ。
制服で高校名はわかったものの
声をかける勇気もなく、
ただカノジョに気づいて欲しくて
その場所に通いつづけているというのです。

この時 T が思いついた名案とは
存在しないわが校の写真部をよそおい
私と2人でカノジョに写真を撮らせてくれと頼むこと。
そして写真ができたら渡したいからと
カノジョの住所なり電話なりを聞き出したいというものでした。
声をかける時に女の私がいれば
カノジョも怪しまないだろう…と。

この名案を断ることができなかったのは
私が学園祭の実行委員になるために
T に裏工作してもらったことや、
夏休みのレポートを
ほとんど丸写し状態まで手伝ってもらった
恩があったからなのです。

「それで…いつ会うの?」
「今日、暇だよね。」
たぶん T は私にあまり選択の時間を
与えたくなかったのでしょう。
それだけ切実だったのかもしれません。
仕方なく制服のまま、
カノジョの現れるという隅田川へと足を向けました。
               -つづくー


何か書く前に
ストーリーのようなものを書こうとしたら
少しだけ長い話ができてしまいました。

仕方ないので続きは明日にします。

読者0で連載開始…秋の夜はせつなくて良いですね。